巻頭言
佐藤 和郎
 新型コロナウイルス感染が急速に拡大しています。武漢を中心とした中国だけでなく、世界各地から感染が報告されています。
 コロナウイルスによる深刻な感染症として2002-2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)と2012年のMERS(中東呼吸器症候群)が知られており、そして今回の新型ウイルス   「2019-nCoV」の出現です。
 中国南部でSARSが2002年に確認され世界に拡がった当初、中国当局はその事実を隠そうとして感染拡大を招いた事実があります。そして国際的な批判を浴びました。中国政府は情報統制を行っており、言論の自由が保障されていないと理解されています。実際、昨年末今回の肺炎についてまだ原因不明の時期に注意喚起がインターネット上に投稿されるや、発言者の李文亮医師は武漢警察よりデマを流布したと訓戒の処分を下されたそうです。しかし、その後も新型肺炎は拡大の一途であり、1月31日武漢市のトップ馬国強書記が国営メディアにやっと対応の遅れを認めました。1月20日の習近平主席の「感染蔓延の断固阻止」や「社会安定の維持」を求める「重要指示」がその前提となっている様です。中央の指示によるものと推測されます。
 一方で中国疾病予防センターの研究者たちが、1月29日「New England Journal of Medicine」(NEJM)にいち早く新型コロナウイルス感染の基本再生産数を発表し、12月中旬にはヒト・ヒト感染が起こっていたという論文を1月30日に公表しました。医療ガバナンス研究所の上昌広氏は、ヒト・ヒト感染は考えにくいと説明していた中国政府の面子を潰す様な論文を中国の研究者が世界最高レベルの医学誌である「NEJM」に発表したことに驚きを示しています。中国の研究者たちの「NEJM」や「Lancet」などへの投稿の活動を称賛している訳です。
 ワクチンの開発の動きも始まっています。米国立衛生研究所(NIH)やエボラ出血熱ワクチンと同じ手法によるジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチン開発です。
 タイからはHIV感染治療薬(リトナビルとロピナビル)とインフルエンザ治療薬(オセルタミビル)を組合せた投与で劇的な効果が報告されています。
 今後、新型コロナウイルスの簡易検査キット・治療法の確立ならびにワクチンの早期の開発が期待されるところです。
(令和2年2月5日記)

愛知県外科医会会報_第117号のサムネイル